複合加工機とは、複数の加工機能を一台に集約した機械で、効率的かつ高精度な加工が可能です。しかし、具体的な加工方法や利点・欠点、そしてどのような製品が実際に作られるのかについては、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、金属加工を得意とする我が社が、複合加工機の基本的な概要からメリット・デメリット、さらに実際の加工事例を交えて、その実力と魅力を詳しく解説いたします。
はじめに:複合加工の概要
複合加工機とは、旋盤加工、フライス加工、穴あけ加工、さらには研削加工など、複数の加工機能を一台に統合した高性能な工作機械です。複数の機能を持つことで、従来の加工プロセスを大幅に短縮し、作業効率を向上させることが可能です。また、複合加工機は一度のセッティングで多様な加工が行えるため、精度の高い製品を効率よく生産することができます。
複合加工機の種類
※引用元:"Neoα-16EX", ターニングセンタ(X・Z・C)- 株式会社オーエム製作所様(弊社保有NCターニングセンタ)
※引用元:"NTX 3000 | 1500 2nd Generation", DMG森精機株式会社
※引用元:"UGM360NC 複合円筒研削盤", 株式会社岡本工作機械製作所
複合加工機には様々な種類があり、それぞれ異なる機能と特長を持っています。主な種類として、以下のものが挙げられます。
まず、旋盤とフライス加工を組み合わせた”旋盤ベースの複合加工機(複合旋盤)”があります。このタイプの複合加工機は、回転する部品を切削する旋盤機能と、直線的な移動で材料を削るフライス機能や穴あけ加工を行うミーリング機能を一体化しています。これにより、円筒形部品の外形加工からフラットな面の切削、穴あけまで一台で対応できます。
次に、マシニングセンタベースの複合加工機があります。複合加工機としてはメジャーな部類で、このタイプを指していることが多いです。フライス加工、穴あけ加工、タップ加工などを行う機能を持つマシニングセンタに、加工物を回転させる旋盤機能を加えたものです。多軸制御が可能で、複雑な形状の部品や高精度が要求される加工に適しています。
さらに、研削機能を統合した「複合研削盤」も複合加工機の1つと言えます。これは、硬度の高い材料や精密な仕上げ加工を必要とする部品に対して、研削加工を行う機能を持ち、外径や内径、端面等の研削加工を一度に行えます。例えば、金型や工具の製作において、非常に高い寸法精度と表面仕上げが求められる場合に活用されます。
また、レーザー加工機能を備えた「レーザー複合加工機」もあります。これは、切断や溶接、表面処理をレーザー技術で行うことができ、特に薄板加工や微細加工に優れた性能を発揮します。
このように、複合加工機には多種多様な種類があり、各々が特定の加工ニーズに応じた機能を提供しています。製造業の効率化と高精度化を実現するためには、用途に合った複合加工機を選定することが重要です。
複合加工機のメリット
複合加工機は、金属加工の分野で高い生産性と精度を実現するために設計された機械であり、多くの利点があります。ここでは、複合加工機の主要なメリットについて3つ紹介します。
- 段取り数の削減による生産効率の向上
複合加工機は、旋盤加工、フライス加工、穴あけ加工など、複数の加工を一度に行うことができるため、複数の機械を使う必要がなく、段取り替えの回数が大幅に減少します。これにより、生産ラインの効率が飛躍的に向上し、リードタイムの短縮を実現します。段取り替えの時間と手間を省くことで、生産性の向上に繋がり、さらには販売コストの低減にもつながります。 - 高精度な加工の実現
複合加工機は一度のセットアップで複数の加工を行うことができるため、主に人手で行われる部品の取り外し・取り付けによる精度低下を防ぐことができます。特に医療機器やインフラ業界向け部品、プラント部品など高精度が求められる部品加工において、複合加工機の導入は非常に有利です。最新の制御技術を搭載しており、微細な加工も高精度で実現することができます。 - スペースの節約
複合加工機は、一台で多くの加工をこなすため、工場内のスペースを有効に活用できます。複数の専用機を設置する必要がなくなるため、省スペースでの生産ライン構築が可能です。これにより、工場のレイアウトがシンプルになり、作業効率がさらに向上します。また、スペースの節約により、他の生産設備や作業エリアの拡充も可能になります。
複合加工機の導入は、これらのメリットにより生産性の向上とコスト削減を同時に実現できるため、メーカーにとって非常に有効な選択肢です。
複合加工機のデメリット
複合加工機は多くのメリットを持っていますが、一方でデメリットも存在します。以下に代表的なデメリットを3つ挙げて詳しく解説します。
- 導入コストの高さ
複合加工機は、高度で多様な機能と多様な加工能力を持つため、その分導入コストが高くなります。新たに設備を導入する際には、初期投資(設備費用)が大きくなることは避けられません。また、機械そのものの価格だけでなく、設置費用やトレーニング費用が大きくなることも考慮する必要があります。これにより、導入のハードルは高い場合が多いです。 - 操作とメンテナンスの複雑さ
複合加工機は多機能であるため、その操作やプログラミングが複雑になります。高度な技術と知識を必要とするため、作業者のトレーニングが不可欠です。特に、CNCやCAMスキルの習熟には時間とコストがかかります。また、機械のメンテナンスにも専門的な知識が必要であり、定期的な保守作業を怠ると故障や生産ラインの停止のリスクが高まります。したがって、場合によっては専門性を持つ設備メーカーや機械商社などの保守サービスを契約する必要も出てきます。 - 柔軟性の欠如
複合加工機は、多様な加工を一括で行うことができる反面、特定の加工に特化した専用機と比べると柔軟性に欠けることがあります。特に、特殊・複雑な形状や材料を加工する場合には、それぞれの加工方法の専用機の方が効率的に対応できる場合があります。また、複合加工機は多機能であるがゆえに、全ての加工条件に対しては最適化されていない場合があり、製品の精度や仕上がりに影響を与えることがあります。
複合加工機の導入を検討している場合は、これらのデメリットを十分に理解し、適切な選択を行うことが重要です。
当社所有の複合加工機(ターニングセンタ)のご紹介
※引用元:"Neoα-16EX", ターニングセンタ(X・Z・C)- 株式会社オーエム製作所様(弊社保有NCターニングセンタ)
当社では計3台の複合加工機を保有しております。機械種別としては、ターニングセンタで旋盤ベースの複合加工機となり、旋削に加えてミリング機能を有しており、穴あけ加工を行うことが可能です。ATC(オートツールチェンジャー)を搭載、アンギュラヘッドを利用することで側面の加工も可能です。
テーブル径Φ(最大旋削外径)は、800[mm](Φ1000[mm])~Φ2800[mm](Φ3000[mm])、最大旋削高はH850[mm]~H2000[mm]の大物丸物加工に対応可能です。
複合加工機の強みを活かし高精度の製品の提供はもちろん、加工工程の合理化による納期・コストダウンの提案も可能です。下記が当社保有の複合加工機(ターニングセンタ)のリストになります。
型式 | 能力(単位:mm) | メーカー | 台数 |
---|---|---|---|
NeO-28EX | Φ2800(Φ3000)× 2000H | (株)オーエム製作所 | 1 |
NeOα-16EX | Φ1600(Φ2000)× 1500H | (株)オーエム製作所 | 1 |
FVT-1000MC | Φ800(Φ1100)× 850H | 高松機械工業(株)(FEELER社製) | 1 |
複合加工機を利用した実際の加工事例
エネルギー業界(発電プラント)向けのタービン部品 サイズ:Φ1600×H500
次に、当社にて実際に加工した大型ターニング加工による製品事例をご紹介したいと思います。
1.エネルギー業界向けのフランジ形状部品
材質 | SM400A |
サイズ | Φ400~Φ850 × 50~100 |
開発期間・納期の目安 | 15~30日 |
公差レベル | ±0.01 |
発電プラントで利用されるフランジ形状部品となります。ターニングセンタを利用して製造しました。外径、内径の加工に加えて、穴あけ加工をワンチャックで行えたため、工数の削減が図れた製品となります。
寸法公差、幾何公差共に厳しい精度が要求される製品ではありましたが、多数の加工実績で得たノウハウを活かして高品質加工を行いました。
2.発電プラントのタービン用部品
材質 | SS系 |
サイズ | Φ1600×H500 |
開発期間・納期の目安 | 加工納期実績:3ヶ月(材料調達含む) |
公差レベル | ±0.05 |
エネルギー業界に向けた発電プラント内のタービン部品です。
当製品は特殊な形状となるため、加工テーブルへのチャックに工夫をこなしております。また、軽量化に向けた肉抜き箇所が多いため、加工時間を要しますが、ターニングセンタを活用することで、コスト削減が図れた製品となります。
そして、溶接加工・塗装までカバーする当社ならではの一貫生産により、生産コストの低減も図れております。
複合加工機とは? まとめ
本記事では、複合加工機について基本的な概要から種類、メリット・デメリット、さらに当社の設備と加工事例を紹介しました。
複合加工機の展望は、精度向上と自動化の進展により、産業全体での生産性向上が期待されます。特に医療機器や航空宇宙分野での需要が高まっており、高精度かつ複雑な部品の一貫生産が求められています。さらに、AI技術の適用に関する開発も進められ、効率的な運用とメンテナンスが実現される見込みです。
当社(株式会社関根鉄工所)は、複合加工機(ターニングセンタ)による大型の丸物加工を得意としており、日々ノウハウの熟練と蓄積に励んでおります。お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
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