最近では、日本国内でも原子力発電所の再稼働に関するニュースを見聞きすることが多くなりました。一方、近年ではSDGs(持続可能な開発目標)等、地球温暖化などの環境問題への対策や地球内に残存するエネルギー資源の消費を抑える動きが強まっておりますが、原子力発電は、再生可能エネルギーなのでしょうか?
ここで、一旦再生可能エネルギーの定義について振り返ると、再生可能エネルギーは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在するとともに、化石燃料等とは異なり、枯渇することなく繰り返し利用可能なエネルギー源を指します。発電のために燃焼を伴わないため、地球温暖化の最も大きな要因とされている温室効果ガス(二酸化炭素:CO2など)を排出せずに電力を生み出すことが可能です。日本も、2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロ)にする目標を掲げており、政策面でも支援策を強めているなど、世界中の各国が持続可能なエネルギー供給の構築に急がれています。
それでは話を戻して、原子力発電は再生可能エネルギーを用いた発電方式なのでしょうか。結論を言うと、原子力は再生可能エネルギーには分類されません。しかし、今日本で最も発電に用いられている火力発電(2023年度で約76%)と比較すると、温室効果ガスであるCO2の排出がほぼゼロであることや、窒素酸化物(NOx)等の大気汚染物質の排出が無いため、原子力発電は環境負荷が低い上で、再生可能エネルギーを用いた発電方式より効率が非常に高い発電方式であり、日本のエネルギー問題や燃料や電気代の高騰を抑える効果に期待ができます。

一方で、原子力発電の利用にはリスクも伴います。特に、2011年の東日本大震災の際の福島第一・第二原子力発電所の事故は記憶にも新しく、全国的に大きな不安に襲われた事件もありましたし、原子力発電では放射性廃棄物の発生を伴い、数万年規模の長期間の管理が求められます。
そして最後に、日本は現在でも原子力発電プラントの開発および運用の技術面においては高水準であることは間違いなく、多くの国内大手メーカーが設計/製作を行ってきた分野です。そして、原子力発電プラントの部品の設計・製造やプラント工事は原子力発電プラントの部品設計・製造やプラント工事は設計元が主導し、日本国内のものづくり企業・中小企業サプライヤーと一体となって進められてきました。今後、原子力発電プラントの国内および海外における開発が進められた場合、日本の製造業全体に対する経済効果は大きく、日本全体の景気向上にも期待が持てます。また、深刻な事故も経験してきた日本であるからこそ、事故への対応のノウハウや安全性を重視した設計が行えるなど、日本の高いものづくり技術が活かせる発電方式であることも間違いありません。

本記事では、原子力発電に特に焦点を当てて、再生可能エネルギーとの比較や原子力発電のメリットと課題、原子力発電の仕組み等について解説します。

再生可能エネルギーとは?

まず、日本が積極的な対策を進めている再生可能エネルギーに関して、解説します。
再生可能エネルギーとは、資源に限りのある石油や石炭、天然ガスといった化石燃料とは異なり、太陽光・風力・水力・地熱などといった自然界に常に存在するエネルギーで一度利用しても比較的短期間に再生が可能である、資源が枯渇せずに繰り返し利用できるエネルギーを指します。また、自然界から得られるエネルギー源のため、世界中どこにでも存在しており、なおかつ温室効果ガス(二酸化炭素)の排出がない、または増加させないため、環境負荷が低いことが最大の特徴とされています。

地球環境にやさしく、脱炭素化に貢献できる再生可能エネルギーは、日本国内では「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向け、急速的に導入が進められており、国外でも、輸入に頼ることなく自国で安定した供給が可能なエネルギーとして、なおかつ持続的なエネルギー供給が実現できるため、世界中で導入が進められています。しかし、再生可能エネルギーの導入は広い敷地を必要とする場合が多く、また、環境への影響も懸念されることから、導入が難しい国もあります。

では、ここで再生可能エネルギーについて、特徴や問題点を詳しくご紹介します。

特徴と種類

再生可能エネルギーとは、石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとが違い、太陽光や風力、水力といった地球資源の一部などの自然界に常に存在するエネルギーを指します。再生可能エネルギーの大きな特徴は『枯渇しない』『どこにでも存在する』『二酸化炭素を排出しない(増加させない)』の3点が定義づけられています。それぞれについて詳しくみていきましょう。

  • 枯渇しない
    再生可能エネルギーは、太陽光や風、流水、地熱といった自然界に存在するエネルギーで、常に再生されるエネルギー資源を活用します。そのため、化石燃料などの有限の資源とは異なり、無限に利用することが可能なのです。例えば、太陽光は毎日地球に降り注ぎ、風は気圧の差によって常に発生します。川の水も雨や雪解けによって循環し続けるため、枯渇することは限りなく発生しません。
    また、長期的な利用も可能なため、将来のエネルギー需要を支える持続可能な選択肢と言えるでしょう。
  • どこにでも存在する
    再生可能エネルギーは地域ごとに適した形で利用できる特徴があります。自然界に広く分布しているため、輸入に依存することなく自国のみで完結できるエネルギー供給を実現できることが大きなメリットです。また、地域の特性を生かした再生可能エネルギーを選択することでその特性をエネルギー供給に最大限に活かすことができます。例えば、山岳地帯では水などの資源や高低差などの地形を活かした水力発電が適しており、平地では太陽の光がほぼ均一となるので太陽光発電が適しています。
  • 二酸化炭素を排出しない(増加させない)
    再生可能エネルギーの最大の特徴であるのが、地球温暖化の主因とされている二酸化炭素(温室効果ガス)の排出を抑制できることです。特に、発電の際にほとんど二酸化炭素を排出しないため、環境への負荷が小さいエネルギー供給が可能とされています。温室効果ガスは削減されることで気候変動の抑制や生態系への環境保全などといった多面的なメリットを持つ取り組みであり、世界各国が取り組むべき課題・責任でもあります。また、再生可能エネルギーの普及は、化石燃料に依存する経済から脱却する鍵とされており、自国が経済的に大きく飛躍できる役割も果たしているのです。

問題点

しかし、再生可能エネルギーの導入には様々な問題点や課題も存在します。こういった問題は技術革新や政策支援などでクリアできる可能性もあり、社会的な意識の改革も重要です。では、いくつか問題点・課題を挙げていきましょう。

  • 導入コストが高い
    再生可能エネルギー設備の導入には、多額の初期投資が必要となる場合が多く、インフラの整備も併せて準備する必要があり、導入コストが比較的高いことが問題点として挙げられます。ですが、欧州では新設の太陽光発電設備の導入が、長期的に見るとガス火力発電の約10倍抑えられている例もあり、また、2022年には化石燃料の輸入が太陽光発電と風力発電によって回避することができ、1月~5月の間で約500億米ドルもの金額が削減できた例もあります。導入コストは高くなってしまいますが、長期的に考えると、環境負荷を大きく低減したうえで莫大な経済的な効果を得られる方式と言えるでしょう。
  • 発電量が不安定、エネルギー発電効率が低い
    再生可能エネルギーは地球温暖化対策として期待されていますが、特に、日本国内においては発電効率の面で課題があります。特に、自然の力に依存するため、エネルギー密度が低く効率的な変換が難しいのが特徴です。まず、日本で再生可能エネルギーの発電量が最も大きいのは太陽光発電です。しかし、そのエネルギー変換効率は一般的に15~20%程度である上で、天候や昼夜に左右されて発電量が安定しないという欠点があります。日本は四季が見られる美しい国ではありますが、この欠点を考えると、梅雨や秋雨前線の時期や冬季に発電量が大きく落ちてしまうため、相性が悪いという考え方もあります。
    風力発電は、最新式のタービンで40~50%の効率を達成できますが、適した風況の地域が限られており、日本は山岳部が多いという課題もあり、設置可能な土地が限られます。
    効率の面で優れているのは水力発電で、60~90%という高いエネルギー変換効率を誇ります。日本は山岳部も多く、ダムなども多く見られ、相性も良い発電方式であると考えられますが、すでに日本国内の適地はほぼ利用済みで、新規開発が難しい状況です。
    結論として、日本で再生可能エネルギーは重要な選択肢であるものの、自然現象に依存する特性から発電効率が低く、化石燃料や原子力発電の代替としては限界があります。効率向上や安定供給を目指した技術開発が不可欠です。
  • 地理的制約や台風や地震等の自然災害が多い日本との相性が悪い
    前項とも重複する内容も多いですが、特に、日本国内において再生可能エネルギーを用いた発電方式は、地理的制約や自然災害の多さゆえに課題が多く、安定した運用が難しいです。
    まず、日本は山岳地帯が多く、平坦で広大な土地が限られているため、太陽光発電や陸上風力発電の大規模設置が困難です。都市部では土地コストが高く、地方でも地形の制約が設置の障壁となります。一方、洋上風力発電に関しては日本も開発投資に積極的であり、今後の活用が期待されるものの、海底基礎の建設や、日本の大きな経済資源ともいえる漁業との調整が課題です。
    さらに、日本は台風や地震などの自然災害が頻発する地域であり、台風は太陽光パネルや風力タービンに直接的な被害をもたらし、地震は設備全体の安全性を脅かします。これらの災害に対する復旧や耐久性確保にはコストがかかり、結果として発電コストの高騰を招いてしまいます。
    これらの理由から、日本では再生可能エネルギーを用いた発電方式は、日本の特長でもある自然条件と相性が悪く、安定供給やコスト面での課題克服が必要です。

原子力発電とは?~仕組み~

それでは、本記事のテーマである原子力発電に関して、その仕組みと構成要素などの説明に移りたいと思います。

原子力発電の仕組み

引用:経済産業省 資源エネルギー庁「電気をつくる方法 その❸ 原子力発電」

原子力発電は、ウランやプルトニウムといった放射性物質を燃料として核分裂反応を利用し、熱エネルギーを電力に変換する発電方式です。その仕組みは大きく以下のように説明できます。

原子力発電の核となるのは、核分裂反応によって大量の熱エネルギーを発生させることです。燃料として使用されるウラン235やプルトニウム239の原子核に中性子を衝突させると、原子核が分裂し、膨大な熱エネルギーが放出されます。同時に新たな中性子が放出されるため、それが他の原子核に連鎖的に反応を引き起こす「核連鎖反応」が発生します。この反応を安定的に制御することで、発電に利用します。

  • 熱エネルギーの生成と蒸気の発生

引用:関西電力「加圧水型軽水炉(Pressurized Water Reactor)」

核分裂によって得られた熱エネルギーは、原子炉内の冷却材(水や二酸化炭素など)に伝わります。冷却材が水であったとして、熱エネルギーを受けた水は、蒸気を発生させ、この蒸気が、火力発電と同様にタービンを回すための動力源となります。

  • タービンの回転と発電

高温高圧の蒸気は、タービンに送られ、その回転力が発電機を動かします。発電機では、タービンの回転エネルギーを電気エネルギーに変換します。このプロセス自体は火力発電と基本的に同じです。

  1. 使用済み蒸気の冷却

タービンを回した後の蒸気は冷却装置(復水器)で水に戻されます。この冷却には通常、川や海の水が利用されます。復水された水は再び原子炉に戻り、循環することで効率的なエネルギー利用が可能になります。

  • 放射性廃棄物の処理

燃料が消費される過程で放射性廃棄物が発生します。この廃棄物は高レベル放射性廃棄物として、長期にわたる安全な保管と処理が必要です。日本では使用済み燃料を再処理してプルトニウムを回収し、再利用する「核燃料サイクル」の取り組みも行われています。

原子力発電の構成要素

ここで、原子力発電プラントを構成する部品等の構成要素から特徴的なものをいくつかピックアップして説明します。

  • タービンおよびタービンブレード

タービンは、核分裂で発生した蒸気の運動エネルギーを回転エネルギーに変換し、発電機を駆動する装置です。その中核を担うのがタービンブレードで、高温高圧の蒸気の衝撃を受けながら高速で回転します。このため、タービンブレードは耐熱性や耐腐食性に優れたニッケル基合金やステンレススチールを用い、精密鍛造やCNC加工技術で製作されます。日本の中小製造業や専門サプライヤーは、ミクロン単位の精度と表面処理技術を駆使して製造を担い、高品質な製品を供給しています。これにより、原子力発電の安定稼働を支える重要な役割を果たしています。

  • 原子炉圧力容器

原子炉圧力容器は、核分裂反応を行う燃料集合体を収容し、高温高圧の環境に耐える構造物です。厚さ数十センチの高強度鋼板を用い、大型の鍛造や溶接・製缶技術によって製造されます。中小サプライヤーも溶接部の品質検査や耐圧性能の確認に関与し、安全基準を満たす製品を提供しています。日本のものづくり技術が集約された部品の一つです。

  • 燃料集合体

燃料集合体は、核燃料を収容する部品で、ウラン燃料を効率的に配置し核分裂を促進します。ジルコニウム合金が用いられ、耐熱性・耐放射線性を備えた設計です。国内の中小企業は、燃料集合体を構成する部品の加工/製作や表面処理を担い、高精度な製品を供給しています。この集合体が、原子炉の発電効率を大きく左右します。

  • 復水器

復水器は、タービンで使用された蒸気を冷却し、水に戻す装置です。内部にはステンレスやチタン製のチューブが設置され、冷却効率が求められます。これらのチューブは、中小企業の高度な鋳造・加工技術により製作され、耐久性や精度が重視されます。復水器の性能が発電の効率を支える重要な役割を果たしています。

  • 冷却材循環ポンプ

冷却材循環ポンプは、原子炉内の冷却材を循環させる装置で、耐熱性や耐圧性能が必要です。鋳造や機械加工技術を活用し、高精度な部品が中小製造業から供給され、製缶技術によって組立が行われることが一般的です。このポンプの信頼性は、原子炉の安全性を維持する上で不可欠な要素です。


本節では、原子力発電の発電工程や原子力発電プラントの構成要素について説明しました。原子力発電は、核分裂反応による熱エネルギーを活用し、効率的に電力を生み出す発電方式です。本節では強く触れることはできませんでしたが、原子力発電は発電プロセスにおいて二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質をほとんど排出しない点がが、現在日本で発電量の7割以上を占める火力発電と比較して大きく異なります。また、原子力発電プラントは今回紹介しきれなかった部品も多々あり、その設計/製作と開発工事には製造業・建設業・インフラ業・材料商社など幅広い業種が関わる上で多大なマンパワーを必要とし、日本の高いものづくりの技術を活かせるとともに、雇用・経済効果を生み出すため、国内に大きな経済効果を与えることに期待できます。

原子力発電のメリット・デメリット

ここまでで、現在大きな注目を浴びている再生可能エネルギーを用いる発電方式と、本記事で焦点を当てている原子力発電の仕組みとパーツなど構成要素に関して説明しました。本章では、再生可能エネルギーや火力発電など現在メジャーである発電方式との比較も踏まえて、改めて原子力発電のメリットとデメリットに関して詳細に説明していきます。メリットだけでなくデメリットも重要な発電方式となるので、ぜひしっかりご一読いただけますと幸いです。

原子力発電のメリット

1.エネルギー効率・発電効率の高さ

原子力発電の大きなメリットの一つは、その高いエネルギー効率です。核分裂反応によるエネルギー密度は非常に高く、わずかな燃料から大量の電力を生み出すことが可能です。たとえば、ウラン1kgから得られるエネルギーは、石炭約1万6,000kg分に相当します。日本はウラン・石炭ともに国外からの輸入がメインとなりますが、燃料費に関しても、2024年末現在では、ウラン1kgが約25,000円、石炭16,000kgが約360,000円となり、費用対効果が高いことがわかります。さらに、原子力発電所のエネルギー変換効率(熱効率)は約30~40%とされており、火力発電の40~50%に匹敵する水準です。一方で、上述した再生可能エネルギーを用いた発電方式に着目すると、太陽光発電のエネルギー変換効率は15~20%、風力発電は最新の設備で40~50%程度ですが、自然条件に大きく左右されるため安定性に欠けます。日本のようにエネルギー資源をほとんど輸入に頼る国では、原子力発電の効率性は特に重要です。同等の出力を得るために必要な燃料量が圧倒的に少なく、長期間安定的に供給できる原子力発電は、他の方式に対して大きな優位性を持つと言えます。この高い効率性により、発電単価を抑えつつ、エネルギーの供給性の向上に寄与する発電方式です。

2.環境負荷の低さ

原子力発電は、発電プロセスで二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの温室効果ガスや大気汚染物質をほとんど排出しないクリーンな発電方式です。日本では、地球温暖化対策が急務となっており、再生可能エネルギーとともに原子力発電が重要な選択肢として位置付けられています。火力発電はCO2の主要な排出源であり、再生可能エネルギーは天候に左右される不安定さから、バックアップとして火力発電を併用するケースが多いですが、これが再生可能エネルギー導入時の矛盾とも言えます。一方、原子力発電はベースロード電源として安定的に電力を供給できる上、環境負荷が低いため、日本および地球上の脱炭素社会実現に大きく寄与します。

4.エネルギー安全保障の向上

日本はエネルギー資源の多くを海外から輸入しており、その約9割が化石燃料に依存しています。しかし、原子力発電の燃料であるウランは、少量で長期間の運用が可能である上で、既知の埋蔵量は約640万トンとされていますが、現在の研究では海水中に約40億トンのウランが存在するという予測もされており、大規模な燃料備蓄が現実的です。これにより、輸送や価格変動のリスクを低減できる点も大きな強みです。また、石炭や天然ガスなどと異なり、ウランは特定地域への依存が少ないため、調達先を多様化しやすく、地域・国際的な政治リスクにも強いと言えます。こうした特性は、日本のエネルギー安全保障を高める上で極めて重要です。再生可能エネルギーは地元資源を活用できる一方で、特に供給が不安定化しやすいため、原子力発電はそれを補完する役割を担う期待が持てます。

5.経済効果と技術革新

本メリットも繰り返し述べておりますが、原子力発電プラントの建設や運用には、高度な技術や専門知識が求められ、日本のものづくり産業を活性化させる効果があります。国内大手メーカーや中小企業が一体となり、部品製造から設計・建設までを担うことで、経済全体への波及効果が期待されます。また、福島第一原発事故後の安全基準の強化により、新たな技術革新が進んでおり、廃炉技術や次世代原子炉の開発を通じて、世界市場における競争力も強化されています。再生可能エネルギーは設置や運用コストが低い場合もありますが、技術的な先進性では原子力発電が持つ優位性は大きいと言えます。

原子力発電のデメリット

原子力発電の採用に関して、先の国内原発事故の惨劇から得たマイナスイメージから、反対する意見の発信をテレビやニュース、街頭などで見た経験が多数ある方も多いのではないでしょうか。実際に原子力発電には放射性物質を使用する関係等から大きなリスクも伴うと弊社も考えております。一方で、原子力発電の稼働停止以来、電気代などエネルギーコストは上昇し続け、一般家庭および国内の景気を圧迫している一因であるのではないか、とも弊社は考えています。メリットでも紹介しましたが、日本は先の原発事故を受けて、安全性(事故を防ぐ設計と、事故発生時の対処の容易化、事故発生時の放射性物質の放出を最小限にする設計)や日本の地理条件(設置エリアが少ない)等をクリアする小型のプラント(軽水炉)の開発等も進められています。したがって、原子力発電の国内再稼働や国外への輸出・運用に関しても、しっかりとリスクも理解した上で安全性を確保した運用は日本の技術力をもってすれば難しい話ではなく、原子力発電は確実にエネルギー問題と環境問題を解決する一手段であると弊社は考えております。
前置きが長くなりましたが、原子力発電のデメリットに関する説明に移ります。上述した通り、原子力発電のリスクの把握も重要となりますので、ぜひご一読ください。

1.放射性物質の危険性

原子力発電の最も大きなデメリットの一つは、放射性物質の危険性です。燃料として使用されるウランやプルトニウムは核分裂によってエネルギーを生み出す一方で、高レベル放射性廃棄物が発生します。放射性廃棄物は放射能を数万年単位で持ち続けるため、気が遠くなるような長期間、安全に管理する必要があります。特に日本では、地理的条件や人口密度の高さから、放射性廃棄物の最終処分地の選定が困難です。さらに、福島第一原子力発電所事故では放射性物質が環境に漏出し、住民の避難や健康被害、農水産物の風評被害を引き起こしました。このような事故が再発した場合、広範囲で長期間にわたる影響が避けられません。
対策としては、高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋設する地層処分が国際的に検討されていますが、日本では適切な候補地が見つからない課題があります。現在、再処理技術や廃棄物の放射能を低減させる技術の研究が進められていますが、実用化には時間がかかる見通しです。簡単な紹介となりますが、放射性廃棄物の廃棄に関しては、その課題点もより明確化する必要がありますが、宇宙処分と言った方式も検討されています。しかし、ロケット射出成功の安定性の課題なども残り、原子力発電の安定的な稼働には宇宙開発分野も重要なキーとなることも考えられます。

2.漁業との相性の悪さ

日本の漁業は経済的にも文化的にも重要な資源ですが、原子力発電所との相性が悪いことが課題です。原子力発電所では冷却のために海水が使用され、使用後の温排水が再び海に戻されます。この温排水は周囲の海水温度を上昇させ、海洋生態系に影響を及ぼす可能性があります。また、放射性物質が海洋に漏出した場合、漁業への影響は甚大です。福島第一原発事故後には、放射性物質の海洋漏出が周辺地域の漁業に大きな被害を与え、一部地域では漁業活動が長期間制限されました。さらに、漁獲物に対する風評被害が発生し、経済的な損失が拡大しました。
対策として、放射性物質の漏出を防ぐための二重三重の防護設備や、温排水の影響を最小限に抑える技術が開発・新型の原子力プラントにはすでに導入されています。また、原子力発電所から排出される温排水を逆に漁業に活用している事例も存在しています(原子力発電所からの温排水は放射性物質を扱う部分と物理的に分離されているため、放射性物質を全く含まない)。そして、政府や自治体、原子力事業者が漁業関係者と協議し、補償制度や風評被害対策を実施することも重要です。

3.地震が多い日本の地理的条件との相性の悪さ

日本は世界有数の地震多発国であり、この地理的条件は原子力発電所にとって大きな課題となります。地震の影響で原子炉が損傷したり、冷却システムが機能不全に陥るリスクがあるため、安全対策には高度な技術が求められます。福島第一原発事故は、地震と津波が複合的に影響を与えた例であり、同様の災害が再発した場合、住民や環境への甚大な影響が懸念されます。
これに対する対策として、日本では新規開発および既存の原子力プラントにおいて、耐震設計の基準が世界トップクラスに強化されています。最新の原発では、耐震性を高めるための構造設計や、電源喪失を防ぐ非常用設備が導入されています。また、地震や津波の影響を想定したリスク評価が実施され、運転の可否は厳しく判断されています。そして、現在開発が急速に進んでいる小型原子炉では、一般に地下に設置される設計も考案されており、万が一の事故時の放射性物質の環境漏出を防ぐ設計がなされているほか、小型原子炉は分散型発電に適しており、多数の原子炉を一か所に集中させる必要がない点も万が一の事故発生時の大規模な被害を避けることが可能となっています。
リスクをゼロにすることはもちろん不可能ですが、過去の事故の経験等も踏まえて、日本は安全性が高い原子炉の開発技術が大きく進歩したといっても過言ではありません。

4.建設と運転に伴う高コスト

原子力発電は建設や運転、廃炉までのトータルコストが非常に高い点もデメリットです。発電所の建設には、10年以上の期間と数千億円から1兆円規模の投資が必要です。さらに、廃炉には数十年単位の期間と膨大な費用がかかります。日本では、福島第一原発事故の後、廃炉費用や賠償金が膨らみ、電力会社や国民に大きな負担が生じています。再生可能エネルギーと比較して、長期的なコスト競争力に課題があると言えます。
一方で、廃炉技術の効率化や運用コスト削減のための技術開発が進められています。また、原子力発電はの導入には現在では、長期的に見れば費用対効果や費用回収が見込める発電方式としては、有力な方式の一つです。ただし、再生可能エネルギーは現在も技術革新が進んでおり、費用対効果の面では、現在でも再エネを用いた発電方式のほうが安全性と費用対効果ともに優位性は高いと考えられます。しかし、再エネを用いた発電方式の日本の地理条件との相性の悪さはこれ次第では費用的なメリットの競争優位性は次第に低下することも見込まれます。

したがって、繰り返しとなりますが、今後のエネルギー供給の安定化と環境負荷の低減の両方を実現し、かつ、日本のエネルギー料金の高騰も抑えるためには、特に日本国内においては、再生可能エネルギーと原子力発電をうまく組み合わせて活用することが重要な鍵になると考えられます。

エネルギー業界関連の部品加工事例

最後に、当社が実際に部品加工を行ったエネルギー業界向けの関連製品事例をご紹介します。

1.再生可能エネルギー業界向けのフランジ形状部品

材質SM400A
サイズΦ400~Φ850 × 50~100
開発期間・納期の目安15~30日
公差レベル±0.01

発電プラントで利用されるフランジ形状部品となります。外径、内径の加工に加えて、穴あけ加工をワンチャックで行えたため、工数の削減を実現し、コストダウンを図れた製品となります。
寸法公差、幾何公差共に厳しい精度が要求される製品ではありましたが、多数の加工実績で得たノウハウを活かして高品質加工を行いました。

2.エネルギー業界向けの半割加工品

材質SS400
サイズΦ500~1500×H500~1000
開発期間・納期の目安加工納期実績:2ヶ月(材料調達含む)
公差レベル±0.05

エネルギー業界に向けて製造した部品となります。
原子力発電も含め、輸送コストの低減や品質の向上を狙ってプラント向け部品では多数の部品がモジュール化して設計、製作されることが多く、この部品も半割加工を行い、組立を前提とした部品となっております。
外径、内径の加工に加えて、穴あけ加工について、弊社のミリング加工機能までを有するターニングセンタを利用して、一度の段取りで行えたため、工数削減と精度向上(高精度な穴位置決め)を実現。工数削減によりコストダウンのメリットも提供しています。

3.発電プラントのタービン用部品

材質SS系
サイズΦ1600×H500
開発期間・納期の目安加工納期実績:3ヶ月(材料調達含む)
公差レベル±0.05

エネルギー業界向けに製造した圧電プラント内のタービンで使用される部品です。
当製品は特殊形状となるため、加工時のワーク(材料)の固定方法に工夫をこなし、品質向上を実現しています。また、軽量化に向けた肉抜き箇所が多いため、加工時間を要しましたが、コスト削減に向けて弊社のノウハウをフル活用し、適切な加工条件および工具選定を実施いたしました。

まとめ~原子力発電は再生可能エネルギー?~

本記事では原子力発電に焦点を当てて、再生可能エネルギーとの比較も行いながら、原子力発電の仕組みや構成部品、メリット・デメリットについて紹介いたしました。主題にも設定した、「原子力発電は再生可能エネルギー?」に関して、厳密な答えはNOです。しかし、原子力発電は環境負荷が低いと言える発電方式の上で、発電効率の高さと安定した電力供給が可能な利点を持ち、気候条件の変動が激しい日本とは相性の良い発電方式となります。また、原子力発電の熱エネルギーの発生に用いるウランのリサイクルを可能とする技術の研究も行われているため、再生可能エネルギーではありませんが、一部の再利用が可能となり、持続可能なエネルギー供給が可能である発電方式とも言えるでしょう。
一方で、再生可能エネルギーの技術発展も目まぐるしく、発電効率は原子力発電には及びませんが、CO2フリーという観点では原子力発電と比べても強い優位性を持ちます。しかし、日本の気候条件や地理条件との相性が悪いため、特に日本国内においては、今後のエネルギー供給の安定化と環境負荷の低減の両方を実現し、かつ、日本のエネルギー料金の高騰も抑えるためには、再生可能エネルギーと原子力発電をうまく組み合わせて活用することが重要な鍵になると考えられます。

当社(株式会社関根鉄工所)は、大型の五面加工機やターニングセンタを豊富に取り揃え、エネルギー業界の部品加工実績も豊富であり、今も技術力およびノウハウの研鑽と蓄積に励んでおります。もし、発電プラント向けの部品製作に関するお困りごとがございましたら、技術相談からでも歓迎いたしますので、お気軽にご相談ください。

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